仮想通貨(暗号資産)の取引で利益(所得)が出た場合、税金を計算して確定申告をする必要があります。しかし、そのルールは株式などとは大きく異なり、知らずにいると税務署から指摘を受けるリスクがあります。
この制度を理解するための重要なポイントは、仮想通貨の利益が「雑所得」に分類されることです。
この記事では、仮想通貨取引で税金が発生するタイミングと、確定申告の必要・不要を見極めるための3つのルールを分かりやすく解説します。
1. 仮想通貨の利益は「雑所得」になる
仮想通貨取引で得た利益は、原則として**「雑所得」**に分類されます。この雑所得には、株式投資などとは違う、重要な2つの特徴があります。
特徴1:利益に応じて税率が上がる「総合課税」
雑所得は、給与所得や事業所得など他の所得と合算され、その合計額に応じて税率が決まる**「総合課税」**の対象です。
- 影響: 所得が上がると税率も上がる累進課税が適用されるため、大きな利益が出ると、**最大で所得税・住民税合わせて55%**の税率になる可能性があります。
特徴2:損失の繰越や相殺がほぼできない
- 損益通算の制限: 株式やFXの利益とは損益通算(相殺)できません。(例:株で100万円の損失、仮想通貨で50万円の利益の場合、仮想通貨の50万円全額に課税されます)
- 損失の繰越不可: 仮想通貨取引で年間損失が出ても、翌年以降にその損失を繰り越すことはできません。
2. 税金が発生する「3つの取引タイミング」
仮想通貨は、保有しているだけでは課税されません(含み益には課税されない)。利益が「確定」したタイミングで課税対象となります。
1. 仮想通貨を売却して日本円にしたとき
- 計算式: 売却時の価格−購入時の価格(取得価額)=所得
- 例: 10万円で買ったビットコインを30万円で売却した場合、20万円が所得になります。
2. 仮想通貨を別の仮想通貨に交換したとき
- 例: ビットコイン(含み益あり)を使ってイーサリアムを購入した。
- 仕組み: 「ビットコインを売却して日本円にし、その日本円でイーサリアムを購入した」とみなされ、売却と同時に利益が確定し課税対象になります。
3. 仮想通貨で商品やサービスを決済したとき
- 例: 利益が出ている仮想通貨を使ってNFTアートや商品を購入した。
- 仕組み: 2と同様に、利益が出ている仮想通貨を「売却した」とみなされ、決済と同時に利益が確定し課税対象になります。
3. 確定申告の必要・不要を見極める3つのルール
給与所得者(会社員など)とそれ以外の方で、確定申告が必要になるラインが異なります。
ルール1:給与所得者の場合(会社員など)
以下の両方に該当する場合、原則として確定申告は不要です。
- 年間の給与収入が2,000万円以下であること。
- 仮想通貨を含む給与・退職所得以外の雑所得の合計額が20万円以下であること。
【注意点!】 利益が20万円以下でも、医療費控除や住宅ローン控除などで確定申告をする場合は、少額でも仮想通貨の利益を必ず申告に含める必要があります。
ルール2:給与所得がない場合(専業主婦・無職など)
仮想通貨を含む雑所得の合計額が48万円(基礎控除額)を超えると、原則として確定申告が必要です。
ルール3:住民税の申告は別!
所得税の確定申告が不要(20万円以下)であっても、住民税の申告は必要な場合があります。お住まいの市区町村の役場で手続きが必要です。
4. 忘れてはいけない「経費」の計上
利益を計算する際、必要経費を収入から差し引くことで、所得を減らし、税金を安くすることができます。
- 全額経費になるもの:
- 仮想通貨の取得費(購入時の価格)
- 取引手数料、送金手数料、出金手数料
- 会計ソフトや計算ツールの利用料
- 按分が必要なもの:
- 仮想通貨取引専用のパソコン代(取引に使用した割合のみ)
- 通信費・電気代(取引に使用した割合のみ)
- 関連書籍、セミナー参加費(取引に直接必要なもの)
【アドバイス】 複雑な損益計算には、仮想通貨の損益計算ツールの利用がおすすめです。取引所からダウンロードした履歴を取り込むだけで、自動で所得額を計算してくれます。
【まとめ】まず「利益の確定」の有無を確認しよう
仮想通貨の税金は、「いつ利益が確定したか」が最も重要です。
取引所から発行される年間取引報告書などを確認し、まずはあなたの今年の雑所得の合計額を正確に計算しましょう。20万円を超える利益が出ている場合は、必ず確定申告の準備を始めてください。
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