会社員として働きながら副業で収入を得ている方は、「確定申告」について考える必要があります。ただ申告するだけでなく、「青色申告」を選択できると、税金面で非常に大きなメリットを享受できます。
「青色申告は個人事業主のもの」と思われがちですが、副業でも**「事業所得」**として認められれば、強力な節税テクニックとして活用できます。
この記事では、副業を「事業」にする条件と、青色申告の最強の節税メリットについて解説します。
1. 副業が「事業所得」になるためのカギ
会社員が副業で収入を得た場合、その所得は基本的に「雑所得」か「事業所得」のどちらかに分類されます。青色申告の特典を受けるには、**「事業所得」**として認められる必要があります。
事業所得と雑所得の違い
| 区分 | 特徴 | 青色申告の可否 |
| 事業所得 | 営利性・継続性があり、事業として独立して行っていると認められるもの(収入が安定し、一定の記帳をしているなど) | 可能 |
| 雑所得 | 給与や事業などの9つの所得に該当しないもの(単発の収入、小規模な副業など) | 不可 |
【ポイント】 税務署に「事業」として認めてもらうためには、開業届を提出し、継続的に収入を得る活動をしていること、そして帳簿付けをしていることが重要です。
2. 青色申告の「最強の節税メリット」3選
副業が事業所得として青色申告をすることで、白色申告や雑所得では得られない、強力な節税メリットが得られます。
メリット1:青色申告特別控除(最大65万円)
青色申告の最大の特典です。事業の所得から最大65万円(または55万円、10万円)を差し引くことができます。
- 効果: 控除額の分だけ課税対象となる所得が減るため、所得税・住民税が安くなり、結果的に国民健康保険料の算定にも影響し、安くなる可能性があります。
メリット2:赤字(損失)を3年間繰り越せる
事業所得がマイナス(赤字)になった場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺(そうさい)できます。
- 効果: 副業を始めたばかりで初期投資がかさみ赤字になったとしても、翌年以降、その損失分だけ税金を払わずに済みます。
メリット3:給与所得と相殺できる「損益通算」
事業所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得と相殺(損益通算)できます。
- 効果: 会社員としての給与所得から赤字分が差し引かれ、その分だけ所得税が還付される(戻ってくる)可能性があります。雑所得ではこの損益通算はできません。
3. 青色申告特別控除の「65万円・55万円・10万円」の違い
青色申告特別控除は、あなたがどのレベルで帳簿付けと申告をしているかによって、控除額が変わります。
| 控除額 | 要件(満たすほど控除額が増える) | 帳簿付けのレベル |
| 65万円 | 55万円の要件を満たし、かつe-Taxによる申告 または電子帳簿保存を行う | 複式簿記 |
| 55万円 | 不動産所得または事業所得があり、複式簿記で記帳し、貸借対照表などを添付して期限内に申告する | 複式簿記 |
| 10万円 | 上記55万円の要件を満たさない場合(簡易な記帳のみの場合など) | 簡易簿記 |
【ポイント】 現在は会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくてもほとんど自動で複式簿記の帳簿を作成し、e-Tax申告も簡単にできるため、65万円控除を目指すのが最もお得です。
4. 青色申告を始めるための「2つの届出」
青色申告を始めるためには、税務署に以下の2つの書類を提出する必要があります。
1. 個人事業の開業届出書(開業届)
- 提出先: 納税地(通常は自宅住所)を管轄する税務署
- 提出期限: 事業の開始から1ヶ月以内
2. 所得税の青色申告承認申請書
- 提出期限:
- 青色申告をしたい年の3月15日まで
- その年の1月16日以降に開業した場合は、開業日から2ヶ月以内
【注意!】 青色申告をしたい年に間に合わせるには、開業届と青色申告承認申請書をセットで、期日までに提出することが重要です。
【まとめ】副業が本格化したら青色申告を!
副業の収入が安定し、本格的に取り組むようになったら、青色申告による**「最大65万円控除」と「損益通算」**のメリットを享受しない手はありません。
会計ソフトの活用で記帳のハードルは大きく下がっています。まずは税務署に届出を出し、最大限の節税効果を目指しましょう。
コメント